まどれーぬの音楽帳

クラシック音楽(主にピアノ曲)が好きな主婦です。好きな曲、好きなピアニスト、再開したピアノレッスンのこと、コンサートの感想などを気ままに綴ります。

2017年にリリースされた録音を振り返る(前編)

世界的には音楽配信(ストリーミングサービス)が一般的になりCD不況、といいながら、日本では割とCDが売れてるようですね。(調べたら、2016年度の音楽売上の8割は未だにCDで、配信は2割とありました。)特に、クラシック音楽ファンはCD派が多い印象。コレクター体質の方+オーディオに拘る方が多いから?でしょうか。

私自身は音質に拘りもなく、コレクション欲も消えつつあり、音楽は最近ほとんどApple Musicで聴いてます。(Appleになくて、どうしても聴きたい音源だけCDを買う)あと、ファンの奏者に関しては基本的には買うようにしています。でも、演奏会に行けばたいていサイン会があるので、できればそこでCDを買いたいな…と思ったりも^ ^; すいません…いや、CD買うので、沢山演奏会して下さい!とここでお願いしておきます。

定額配信の魅力は新譜を気軽にチェックできることなので、ちょっとでも気になったものはとりあえずライブラリに入れておいて時間のあるときに聴く、という使い方をしてます。ただ、そうなると積ん聴きが増えて、忘れた頃に聴く、なんてこともあり^^;

年末なので、そういった音源も掘り起こしつつ、2017年にリリースされたものの中から特に気に入ってるものを振り返ってみようと思います。

※例によってピアノばかり、かつ奏者も好みが偏っています。また、巷のCDレビューにあるような録音の質については触れてませんので悪しからず…

 

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David Fray:Chopin


CHOPIN

 2017年2月にリリース。ダヴィッド・フレイといえばバッハ、シューベルト、モーツァルト、だと思ってた私が衝撃を受けた一枚。リリースを知った時、何でまた(今になって)ショパンを録音?と頭の中がハテナマークで一杯になりましたが…実際、ショパンを弾いたのは10年以上前の何かのコンクールが最後、だったらしく、彼にとってショパンは心情的に遠い作曲家だったようです。(この辺りの話は書き出すと長くなるので割愛)

収録曲は夜想曲、マズルカ、ワルツ、即興曲、からの抜粋(小曲)と、大曲は幻想ポロネーズのみ。彼自身、レパートリーは全部自分で選ぶと公言してるので、感性にフィットする曲というのがこれなのかな、と考えると面白いです。

一聴して、よく耳にするような華やかなだけのショパンとは全く違うなと思いました。右手の旋律はベルカント…極限まで美しく歌い、左手の伴奏はほぼ1小節ごとに音色が変わるほどに繊細。ルバートのかけ方は大ぶりで、息の長いフレーズ感が気持ちいいです。昔懐かしい、アルフレッド・コルトーとか、リパッティみたいな、と言ったら分かるでしょうか。で、ノルタルジックな弱音に酔いしれていると、不意に心に突き刺さる鋭い一音で深みに突き落とされたり、不思議な浮遊感があります。

幻想ポロネーズは、私的には掴みどころがなくて苦手な曲だったんですが、この方の後半の盛り上げ方、薄皮をめくっていくような感じでゾワゾワしますし、最後に楔のように打ち込まれる一音は聴いたことのないような生々しい音で、心を鷲掴みにされてしまいました。

…この解釈で、バラード、スケルツォ、ソナタなんかの大曲の演奏をぜひ聴いてみたいのですが、どうでしょうね。彼の2018年の演奏会のレパートリーに「ピアノ協奏曲第2番」が入ってるので、色々と期待したいところではあるのですが。(個人的に、1番ではなく2番を選んだところにめっちゃ痺れました。1番より、断然2番派なので 笑)

ショパンはロッシーニのオペラのファンだったそうで、ショパンのメロディには間違いなく歌、が流れているはずなんですが(それを理解してる奏者が果たしてどれだけいるのか)、ショパンの肉声が感じられる数少ない演奏だと思います。

 

Rafal Blechacz:バッハ・リサイタル


バッハ・リサイタル

2017年2月リリース。ブレハッチ=ショパンコンクール優勝、ということでショパン弾きのイメージが強く、食わず嫌いをしていたことを反省した1枚。ピアノを習うより前に4歳から教会のオルガンを弾いていたというブレハッチのバッハは清廉で端正。そこにほんの少しロマンチックな感じも加わって、大変良いです。正直に申し上げると、彼のショパンは綺麗すぎ、整いすぎで私には少々近寄りがたいのですが、バッハとなると音の綺麗さが生きています。イタリア協奏曲の闊達かつエレガントさの香る演奏、パルティータの繊細な呼吸が感じられる演奏が特に好きかな。一見、さらっと弾いてるふうで内声の弾き方を1回目とリピートで違う弾き方をしてるところとか、これはもうバッハが好きな人の演奏だよねぇ…とにんまりしてしまうのです。

余談ですが、前述のダヴィッド・フレイとブレハッチは2003年の浜松国際ピアノコンクールに同時に出場し、ブレハッチは2位、フレイは奨励賞を受賞。そこから14年後、全く違う方向性でキャリアを築いた2人が、互のメインのレパートリーを交換したような曲目のアルバムを同時期にリリースしたのって(偶然でしょうが)なんだか面白いなーと思ってしまいました。

 

Andras Schiff:アンダンテ・ファヴォリ~シフ/アンコール集


アンダンテ・ファヴォリ~シフ/アンコール集

輸入盤のリリースは2016年11月でしたが、国内盤は2017年3月なので、無理やり入れさせてもらいました。サー・アンドラーシュ・シフによるベートーヴェン全集のライブ録音時の、アンコールに弾かれた曲たちを集めたCD。アンコールの演奏だけでCD1枚分の価値のある音源が集まるのがシフ様のすごいところ。確かに、シフの演奏会のアンコールは曲数の多さ(5曲ぐらいは余裕)に圧倒されたので、それだけでもミニコンサートとして成立しそうではありますが。最初のシューベルトからしてテンション高く、ライブ特有の高揚感が感じられるのが良いです。

ハイドンのソナタ第32番 ト短調 Hob.XVI:44のはっちゃけてる感じとか、最高。シフ・ファンの方で、彼のハイドンを推されてる方がいらっしゃるのですが、こういう演奏を聴くとすごく納得^^ 安定のバッハ、パルティータ1番、平均律1巻より変ロ長調も素晴らしいです。

 

Jan Lisiecki:ショパン/アンダンテ・スピアナートと華麗なる大ポロネーズ、他-ピアノと管弦楽のための作品集


ショパン:アンダンテ・スピアナートと華麗なる大ポロネーズ、他-ピアノと管弦楽のための作品集

2017年3月リリース。売れっ子のヤン・リシエツキは、協奏曲のソリストとして世界中のオケ、指揮者との共演が絶えませんね。ここではクシシュトフ・ウルバンスキの指揮の元、NDEエルプフィルハーモニー管弦楽団と共演。ウルバンスキ氏はポーランド人なので、同じくポーランドにルーツを持つヤン君とは何か通じ合うものがあったのか、コンビネーション抜群。ヤン君はかつて、ショパンはモーツァルトのように弾くべきだ、とインタビューで語ってましたが、まさに玉のようにコロコロと転がる音が心地よく、オケもその世界観に寄り添っていて、彼の歌心を邪魔しない感じがとても良いです。

このCDがリリースされるタイミングと、エルプフィルハーモニーの新ホールの完成タイミングが重なったのもあって、プロモーション動画のエルプフィル推しがすごかったのが可笑しかったです。わざわざ、建物が映るように屋外にピアノを持ち出してロケしてて、おぉ、お金かけてる!とか思ってしまった^ ^;(CDジャケットにも映りこんでるかな?)エルプフィルはそのユニークな外観から、インスタ映えNo.1ホールの地位を獲得したみたいなので、推してもらえて(?)良かったですね。(私も密かにいつか訪れてみたいと思ってますが…)

 

Remi Geniet:Beethoven


Piano Sonatas No.2,9,14 &

2017年4月リリース。レミ・ジュニエの存在を知らなかった私が、これを聴いて一発でファンになったという思い出の一枚。この方は音がものすごく透き通っていてとにかく美音、かつ、音色のパレットが豊富。(フランス人のピアニストには圧倒的に音色の使い分けに唸らせられることが多いのですが、何故なのでしょう…)きめ細やかで清流のような爽やかさのあるベートーヴェン。

収録曲はピアノソナタ2番、9番、14番(月光)、31番。「月光」と 31番以外はマイナーだと思いますが、9番は中〜レベルのピアノ学習者にはお馴染みの曲かと。私的にはメロディが歌いにくく、とても取っつきにくかった記憶があり、この方の滑らかな演奏を聴いて「こんな良い曲だっけ?」と目から鱗が落ちました。(比べてはいけません)

「月光」は第一楽章の陰影に富んだ音色、二楽章の澄んだ音色が印象的で、三楽章は激高しすぎず冷静な演奏。31番の堂々した弾きっぷりも見事で、音がキラキラ✩しすぎているところにやや「青さ」が感じられなくもないですが、それもまたよし。

レパートリーにはラフマニノフやラヴェルの技巧曲もあるようですが、あえてベートーヴェン(とバッハ)を録音しているところがツボでした。

彼はLFJの常連のようで、来年も出演するのかなと。LFJと絡めて、かどうかは分かりませんが、4月に東京文化会館でのリサイタルは既に決定しているので、楽しみです。

2018年4月 レミ・ジュニエ公演情報→レミ・ジュニエ | 東京音協

 

 

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 長くなったので、後半につづ…く。

 

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